ウンコう日誌(第871号)

大阪ユニオン駅の朝は、いつも通り混沌としていた。

「ओए ओए जल्दी चल!釜ヶ崎行きやで!」
「빨리 타라!자리 없다!」

怒号と笑い声と、多言語がぐちゃぐちゃに混ざるホームの端に、その機関車はいた。

黒く煤けた、小さな機関車。
前面の銘板は削られ、「無限」の文字の跡だけがうっすら残っている。

「嘿…あれ、例のやつやろ?」
「ဟုတ်ကဲ့…ムゲン列車ってやつ…」

かつてそれは、終わりのない輸送を強いられた列車だった。
炭鉱から港へ、港から都市へ、都市からまた炭鉱へ。
人も荷も、区別なく積まれ、ただ回り続けるだけの存在。

誰が名付けたのか、「無限列車」。

だが、ある日それは壊れた。
いや、「止まった」。

芦原橋の手前、信号もない線路上で、ふっと蒸気を吐くのをやめたのだ。

「なんやこれ、終わりか?」
「끝났어…?」

誰もがそう思った。

だが、その時。
機関士だった老人が、ぽつりとこう言った。

「もう、ええやろ。無限なんて」

それからこの機関車は、害吉鉄道に拾われた。

貨車もボロ、客車も寄せ集め。
屋根には人が乗り、窓からも手足がはみ出す。

それでも——

「次は南津守!降りるやつ 준비해!」
「अरे उतरना है!降りるで!」

列車は「終わる」ことを覚えた。

コンクリ桟橋に着けば、必ず停まる。
人は降りる。
また別の人が乗る。

無限ではない。
ちゃんと、区切りがある。

駅の詰所で、若い作業員が聞いた。

「社長、なんであれ使ってるんですか?」
鉄道帝は笑った。

「無限やったもんをな、“有限”にしたるんが、帝の仕事や」

ホームの端で、例の機関車が小さく汽笛を鳴らす。

「पोंーーー!」

それは、かつて終わらなかった列車が、
初めて「今日の終わり」を知った音だった。

Pocket

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です