ウンコう日誌(第861号)

――大阪民国・芦原橋(本社前)駅構内。
かつて「無限」と書かれたプレートを掲げ、
どこまでも走るはずだった機関車は、
いまや害吉鉄道の入換用に成り下がっていた。
黒光りする小さなボイラー。
玩具のような体躯。
だが、煙室扉の奥には、まだ消えていない火がある。
芦原橋駅のホームでは、
さまざまな言葉が渦巻いていた。
「오이 오이、釜ヶ崎 行くんか?」
「去釜ヶ崎嘅?快啲上啦!」
「ไปๆ รถจะออกแล้วเด้อ」
「đi nhanh lên, tàu sắp chạy rồi」
「जल्दी गर्, हिँड्छ रेल!」
無限列車は、いまや“有限”の区間しか持たない。
大阪ユニオン駅から芦原橋(本社前)、
そしてコンクリ桟橋へ。
そこに流れ着く、世界中の労働者たち。
かつては夢を乗せた。
いまは現実を運ぶ。
機関士は、煤だらけの手でレバーを引いた。
「ほな、行くで。無限は無理やけどな。」
ゴト、ゴトン。
青いレールの上を、黒い車体が進む。
貨車の上には、コンクリ桟橋から来たばかりの男たち。
荷物の山、赤い布袋、青いコンテナ。
「እዚ የአዲስ ሕይወት ነው?」
「新生活やて?知らんわ、働くだけや。」
「काम काम मात्रै हो…」
芦原橋の信号が青に変わる。
駅舎の横では、
害吉鉄道社長――自称「鉄道帝」が腕を組んでいる。
「ふふふ…無限列車か。
無限とは路線のことではない。
人の欲望が無限なのだ。」
正気かどうかは分からない。
だが、小さな機関車は今日も走る。
時代に取り残されながらも、
大阪民国の混沌を、確実に繋いでいる。
無限ではない。
だが、止まらない。
煙は出ない。
それでも、確かに前へ進む。
ゴト、ゴトン。
ゴト、ゴトン。
次は――釜ヶ崎。





