ウンコう日誌(第785号)

かつて北海道の天塩炭鉱鉄道で石炭列車を牽いていたC58。厳冬の日本海から吹き込む季節風と、山奥の鉱山地帯の急勾配に耐え抜き、煤にまみれながらもひたすらに走った機関車だった。
しかし、炭鉱の閉山とともに役目を終え、スクラップ寸前の状態で長らく放置されていた。そのボイラーは割れ、テンダーは穴だらけ。誰もが「もう動かん」と見放していた。
そんな時、なぜか大阪民国の害吉鉄道の社長――自称「鉄道帝」が天塩の廃坑を訪れ、朽ちかけたC58を目にしてこう言った。
「これぞ大東亜の闘魂列車や! コンクリ桟橋まで連れて帰って、再び労働者を運ばせたる!」
かくしてC58は貨物船に積み込まれ、荒れ狂う日本海と瀬戸内海を越え、大阪民国のコンクリ桟橋へと上陸。そこで害吉鉄道の整備工場によって奇跡的に蘇生された。部品の多くは別形式の寄せ集めで、天塩炭鉱時代の面影は煤けた煙突とプレートに残るのみ。
現在では大阪ユニオン駅から芦原橋、さらにコンクリ桟橋へと向かう長大貨物列車の先頭に立ち、世界中から流れ着く混沌の労働者を乗せた客車をも引き連れて走る。
沿線の子供たちは、この煤けたC58を「天塩帰りのクロガネ」と呼ぶ。
だが大人たちは口をそろえてこう言う。
「正気かどうかはわからんが、あの鉄道帝とC58はどっちもまだ走っとる」