ウンコう日誌(第766号)

害吉鉄道の大阪ユニオン駅

そこに現れるのは、異様な黒い流線型機関車 ―― C53である。

もともとは昭和初期、東海道を疾駆した高速旅客用の花形だったが、敗戦と混乱を経て祖国に戻ることもできず、行き場を失っていた。それを「鉄道帝」が拾い上げ、「害吉鉄道の威信を示す旗艦」として走らせているのだ。

だが威信とは名ばかりで、豪華列車ではなく、屋根までびっしり人と荷で埋まった客貨混合の「カオス列車」を牽いている。

コンクリ桟橋に漂着したアジア・アフリカの労働者が、荷物ごと屋根に積まれ、釜ヶ崎を目指して揺られていく。乗務員は「安全第一」と書かれた旗を掲げながらも、誰一人として安全を保証できない。

芦原橋(本社前)で一旦停まると、社長自らが白い軍服を着て演説をぶつ。「これぞ大東亜鉄道の未来像である!」

誰も聞いていない。労働者たちは、次の現場で飯が食えるかどうかしか頭にない。

それでも、C53は誇らしげに汽笛を鳴らす。

かつての栄光も、いまの混沌も、その黒い流線型のボディに等しく映り込んで。

そして今日もまた、害吉鉄道のC53は、世界で最もカオスな都市・大阪民国の路を突き進んでいく。

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