ウンコう日誌(第743号)

大阪ユニオン駅の6.5番線、木炭動車107号がぷすんぷすんと煙を吐いていた。

「今日も混んでるなあ……いや、人間の話ちゃうで」
駅員のキム・田中がぼやく。車内には、買い出し帰りのオモニ、釜ヶ崎行きの荷車、何かの部品、あとなぜか生きた鶏までいる。害吉鉄道の木炭107号は、もともと軽便鉄道用のディーゼルカーを魔改造して、木炭仕様にした客車である。

客車でありながら、車体の片側には小さな荷物扉があり、「コメ」「ケーブル」「サイダー」「謎」と書かれた札がぶら下がっている。さらに白いダイヤル式送風機(たぶん100均改造)で燃焼を補助する仕組み。

「これ、換気扇の部品やろ!?」と突っ込みたくなる外見だが、実際に動くから誰も止めない。

今日の行き先は、堀江新地〜釜ヶ崎支線を経由して、南津守のバラック街にある臨時市まで。客も荷も一緒に詰め込んでの混沌輸送だ。

「はーい、途中、芦原橋では干物と人間の乗り間違えにご注意ください!」

運転士が大声で叫ぶと、木炭107号は煙と叫びと煤とともに、ゆっくりと青い軌道をきしませながら発車していった。

その背中に、誰かがつぶやいた。

「……これが、アジアのラゴスか」

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