ウンコう日誌(第868号)

大阪民国の朝は、だいたい騒がしい。
大阪ユニオン駅の高架ホームでは、荷物を抱えた人間、寝袋を背負った人間、どこの言葉とも分からない怒鳴り声が混ざり合い、まるで市場のような音が渦を巻いていた。
その中を、古びた小さな電車がゆっくりと入ってくる。
害吉鉄道の蓄電池動車である。
緑色の小さな車体は、蒸気でもディーゼルでもない。夜のうちに芦原橋の充電小屋で電気を詰め込まれ、今日も大阪ユニオンと釜ヶ崎の間を往復する。
コト…コト…と静かな音を立てながら、ホームに止まった。
運転士が窓を開けて叫ぶ。
「ほな行くでー!釜ヶ崎ぃ!芦原橋ぃ!」
すると乗り込んできた連中が口々に騒ぎ出す。
「阿兄,这车去釜ヶ崎吗?」
「간사키 가? 오늘 일자리 있어?」
「ไป釜ヶ崎 มีงานก่อสร้างบ่?」
「काम छ कि? कंसाकीमा?」
「မင်္ဂလာပါ、釜ヶ崎 行く?」
「ଏଇ ଟ୍ରେନ୍ କାମ ଅଛି ନା?」
車掌が手を振る。
「あるある!仕事なんか毎日あるで!無かったら寝ときゃええねん!」
ホームの端で、駅員が苦笑いしている。
「今日も満員やなあ」
横にいた荷役の男が肩をすくめた。
「コンクリ桟橋の船、昨晩また着いたらしいで。ベトナムとネパールやて」
駅員が口笛を吹く。
その時、車内から怒鳴り声が響いた。
「अरे! सीट छैन!」
「おい押すなや!」
「哎呀别挤!」
そして運転士がベルを鳴らす。
チン、チン。
小さな蓄電池動車は、ぎゅうぎゅう詰めの労働者を乗せて、ゆっくりと動き出した。
行き先は芦原橋、そして釜ヶ崎。
大阪民国の一日が、また始まる。





