ウンコう日誌(第867号)

大阪民国・コンクリ桟橋駅。
海からの湿った風が、古びたプラットホームを吹き抜けていた。錆びたクレーン、雑多な倉庫、どこから来たのか分からない言葉が飛び交う港。
そこへ、黒い蒸気機関車がゆっくりと滑り込んできた。
C57――いや、この街では別の名前で呼ばれている。
「台湾帰りのC57、CK285」。
長い旅をしてきた機関車だ。
日本の本線を走り、海を渡り、台湾総督府鉄道で酷使され、戦争と混乱を生き延び、そしていつの間にか大阪民国の害吉鉄道に転がり込んできた。
プシューーーーッ。
蒸気が吹き出す。
駅員が帽子を押さえながら叫ぶ。
「おーい!芦原橋行き到着や!荷物先降ろせや!」
客車の屋根には、なぜか人が乗っている。
ベトナム語、タイ語、中国語、韓国語がごちゃ混ぜになって飛び交う。
「Ê anh ơi!大阪ユニオン行くんか?」
「去芦原橋吗?我找工作啊」
「야 이거 진짜 기차 맞아?」
「ไป釜ヶ崎ได้ไหม?」
運転席の横で、機関士が煙草をくわえている。
顔はよく焼けている。
「こいつはな、台湾から来たんや。山越えも海風も知っとる機関車やで」
助士が笑う。
「そら顔つき違いますわ。C57でもなんか…南方顔」
そこへ、屋根の上から声。
「नमस्ते!ここ大阪ユニオン行く?」
「འདི་གི་རེད?釜ヶ崎?」
機関士が肩をすくめる。
「どこでも行くで。害吉鉄道やからな」
汽笛が鳴る。
ボォォォーーーッ。
CK285は、煤だらけの客車を引きながらゆっくり走り出した。
プラットホームでは港湾労働者が手を振る。
「好好开啊!老蒸汽!」
機関士が窓から叫び返す。
「걱정すんな!この機関車はな!」
そして誇らしげに言った。
「台湾帰りや!!」
列車は芦原橋へ向かう。
世界中の労働者を乗せて。
大阪民国の鉄道は、今日もカオスだった。
――害吉鉄道 台湾帰りCK285運用列車
コンクリ桟橋 → 芦原橋(本社前) → 大阪ユニオン





