ウンコう日誌(第775号)

大阪民国の害吉鉄道、芦原橋(本社前)から釜ヶ崎へと走る小さな木炭動車

番号は「107」。

青いレールの上で、今日もポコポコと木炭を燃やしながら進んでいく。

停車場のベンチには、労働者風の男が煙草をふかしながら立っていた。

「おい、まだ走っとんのか、このポンコツ」

そう言いながらも、彼はちゃっかりと切符を握っている。

木炭動車は正面に煤をかぶったまま、黒い排気を吐いて発車の準備をしている。

煙突からはうっすら白煙が上がり、車掌はバケツに入った木炭をくべていた。

「大阪ユニオンから来たやつは、だいたいここで釜ヶ崎へ向かうんや」

「ほな、また今日も人が増えるわな」

やがて、ガタン、と音を立てて動き出す。

ゴトゴトと揺れる床、窓の外にはコンクリ桟橋から運び込まれた木箱や麻袋の山。

遠くからは蒸気動車や蓄電池動車の汽笛も聞こえてくる。

大阪民国の中で最もカオスな路線。

世界中の労働者が集まり、木炭を燃やして走るポンコツ車両に詰め込まれ、

今日もまた釜ヶ崎へ運ばれていく。

そして社長は、夢見るようにこう呟く。

「この木炭動車から、大東亜の支配は始まるんや……!」

だが、乗客の誰一人としてそれを信じる者はいない。

ただ、ガタガタと揺れる木炭動車に身を任せ、

次の飯場へ、次の職場へと運ばれていくだけであった。

——害吉鉄道、木炭動車の一日である。

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