ウンコう日誌(第760号)
2025年8月11日 2025年8月12日

かつて北海道の天塩炭鉱鉄道で、石炭を満載した長い貨物列車を力強く牽いていた社型C58。冬は吹雪、夏は霧と虫の群れ、それでも黙々と走り続けた働き者だった。
しかし、炭鉱閉山とともに売却され、遠く離れた大阪民国・害吉鉄道へと渡ってきた。
ここは湿気と潮風にまみれ、真夏のコンクリ桟橋には熱帯の蒸気がこもるアジアンカオス。港から押し寄せる各国の荷と人を、今度はスイッチバックと急カーブだらけの線路で運ばねばならない。
だが、この社型C58、最近どうも調子が悪い。シリンダーの音がかすれ、煙突からは黒煙ではなく白い水蒸気が混じる。かつての寒冷地仕様が仇となり、熱気にやられてしまうのだ。
それでも「まだ走れる」と言わんばかりに、今日も釜ヶ崎行きの代用客車を牽く。沿線の子どもたちは「黒い息切れ機関車」と呼び、車掌は冗談半分に「こいつが止まったら、船の荷も止まるんだ」と笑う。
港の混沌も、釜ヶ崎の喧噪も、すべてを背に積み込んで、息を切らしながらも走り続ける老機関車だった。