ウンコう日誌(第759号)
2025年8月9日

害吉鉄道の蒸気動車107号は、もともと昭和初期に大阪市内の路面電車として造られた車両だった。戦時中にガソリン不足で廃車寸前となったが、戦後すぐに害吉鉄道が「貨物列車の後ろで客も運べる便利な車」として譲り受け、屋根に小型の蒸気ボイラーを積み、煙突を突き出して蒸気動車に改造された。
大阪ユニオン駅を出た107号は、国際市場を抜け、堀江新地をかすめ、芦原橋(本社前)までやってくる。車内には、日本中から集まった日雇い労働者や、コンクリ桟橋に着いたばかりの東南アジア系の港湾労働者が混ざって乗っている。エンジンの代わりにボイラーがコトコトと音を立て、石炭の匂いが漂う中、車掌は混ざり合う言語を聞き分けながら、乗車券ではなく現金の小銭を直接集めて回る。
釜ヶ崎に近づくと、車内はさらに活気づく。誰かが故郷の歌を歌い始め、隣の客は魚の干物を取り出し、その香りが蒸気の熱気と混ざる。107号は、時代に取り残された姿のまま、このカオスを毎日往復している。