中央情報課 9 3月 2026 ウンコう日誌(第865号) 大阪民国の朝は、いつも湿った鉄の匂いがする。 大阪ユニオン駅の外れ、害吉鉄道の留置線に、一台の小さな蒸気機関車が静かに立っていた。 C56形蒸気機関車。 かつて南方――泰緬鉄道を走った機関車である。 戦争が終わり、海を渡って戻ってきたその機関車は、今では害吉鉄道の雑多な貨物列車を引く仕事をしていた。… 続きを読む
中央情報課 17 2月 2026 ウンコう日誌(第855話) それは、かつて南方の密林を走ったC56だった。 泰緬鉄道――いまは歴史書の中でしか語られないその路線で、赤い土煙を浴び、雨季の濁流に耐え、ジャングルの匂いをまとったまま帰ってきた。 昭和二十一年の秋。 博多港に陸揚げされたその小さな機関車は、どこか異国の気配を残していた。煙室扉の縁にはうっすらと錆、… 続きを読む
中央情報課 24 1月 2026 ウンコう日誌(第843号) それは「帰りの機関車」だった。 前面に掲げられた番号は C56 160。 だが、機関区でも労務者宿でも、そんな数字で呼ぶ者はいなかった。 「サルゴリラチンパンジーが来たぞ」 誰かがそう言えば、皆が黙る。 笑う者はいない。縁起でもないからだ。 泰緬鉄道。 ジャングルを切り裂き、死体の上に敷かれた線路。… 続きを読む
中央情報課 4 1月 2026 ウンコう日誌(第833号) そのC56は、帰ってきた、という言い方が一番近かった。 泰緬鉄道。地図の上では一本の細い線に過ぎない場所から、時間と死体と湿気だけを腹いっぱいに詰め込んで。 害吉鉄道・大阪ユニオン駅の片隅、貨物線の先で、C56はゆっくりと息を吐いた。吐いた息はもう蒸気ではなく、黒い埃だった。 「おお……また生きとっ… 続きを読む
中央情報課 7 12月 2025 ウンコう日誌(第819号) 害吉鉄道・大阪ユニオン駅の片隅。蒸気機関車たちの溜まり場になっている古い検修庫に、黒光りした小ぶりの機関車が静かに眠っていた。 C56 160――通称「サルゴリラチンパンジー」。泰緬鉄道から帰ってきて何十年も経つのに、その異名だけはなぜか色濃く残っている。 帰国直後は国鉄の機関区を転々とし、そして老… 続きを読む
中央情報課 13 11月 2025 ウンコう日誌(第807号) 泰緬鉄道から帰還したC56形の 160号機。 大阪民国の害吉鉄道に配属されると、妙なあだ名をつけられた。「サルゴリラチンパンジー」。 理由は簡単で、戦争帰りであちこち傷だらけ、煙突にはジャングルの煤がこびりつき、側面にはサルにつけられた爪痕らしきものまで残っていたからだった。 コンクリ桟橋駅の早朝。… 続きを読む
中央情報課 20 10月 2025 ウンコう日誌(第795話) 害吉鉄道・芦原橋本社前。夕暮れのヤードに、黒く煤けたC56形が静かに止まっていた。 機番は「C56160」。そのナンバープレートの下には、小さく「かばちゃエクスプレス」と書かれた札。だが誰もその由来を知らない。 この機関車は、かつて泰緬鉄道を走った帰還機だった。ジャングルの湿気と赤土をまとい、戦後の… 続きを読む
中央情報課 20 9月 2025 ウンコう日誌(第780号) C56 160号機。かつては泰緬鉄道の酷暑と密林を走り、数え切れぬほどの兵站と人命を背負った。ジャングルの鉄橋を渡り、赤土の築堤を喘ぎながら越え、蒸気のたびに熱風と絶望を吐き出してきた。 その小さなボイラーに詰め込まれていたのは、石炭と水だけではなかった。汗、血、涙――そして帰れなかった者たちの声だ… 続きを読む
中央情報課 27 8月 2025 ウンコう日誌(第768号) 泰緬鉄道帰りのC56形蒸気機関車、番号は「C56160」。 戦場のジャングルで酷使された機関車は、今や害吉鉄道の主力のひとつとして、コンクリ桟橋から釜ヶ崎へと、人と荷を満載して走る。 屋根の上にもしがみつく人びと、荷物に腰かけて眠る者、炊飯釜を抱えたままの移民労働者。車内は混沌そのもので、聞こえる言… 続きを読む
中央情報課 30 6月 2025 ウンコう日誌(第739号) 朝霧のたちこめる大阪ユニオン駅。 構内放送は壊れて久しく、代わりに炊き出しのスピーカーが「おにぎり一個百円やでぇ〜」とけたたましく響いていた。 そこへ現れたのが、黒光りする戦時型蒸気機関車。 番号はC56160、通称「サルゴリラチンパンジー号」。 屋根にはいつのまにか野良犬と洗濯物、そして人間数名が… 続きを読む