c路線別

ウンコう日誌(第822号) 中央情報課

ウンコう日誌(第822号)

夜明け前、コンクリ桟橋の空気は潮と油と、言葉にならない雑多な匂いが混じっていた。 107号はまだ眠っているように見えたが、屋根の蓄電箱の奥では、昨夜ため込んだ電気が静かに目を覚ましていた。石炭も軽油もいらない。音も煙も出さない。ここではそれが都合がよかった。 ホーム脇の詰所から、係員が顔を出す。 「…
ウンコう日誌(第821号) 中央情報課

ウンコう日誌(第821号)

──害吉鉄道・大阪ユニオン駅にて 台湾の山岳線を駆け抜けていた名機・CK285は、海を越えて大阪民国へ流れ着いた。 害吉鉄道の車庫係に言わせれば、 「또 하나 이상한の来よったで……どこから拾うて来たんや社長(サッチャン)……」 と頭を抱えるしかない厄物のひとつだった。 だが社長こと“鉄道帝”は、胸…
ウンコう日誌(第820号) 中央情報課

ウンコう日誌(第820号)

——大阪民国・混沌の街をコトコト走る“湯気の電車”—— 蒸気動車107号は、害吉鉄道の中でもひときわ異様な存在だった。 大阪ユニオン駅の片隅に、煤だらけの煙突をちょこんと生やし、 電車のようで電車でなく、汽車のようで汽車でもない。 戦前に北海道の片田舎で走っていたというが、 なぜか第四世界の大阪民国…
ウンコう日誌(第819号) 中央情報課

ウンコう日誌(第819号)

害吉鉄道・大阪ユニオン駅の片隅。蒸気機関車たちの溜まり場になっている古い検修庫に、黒光りした小ぶりの機関車が静かに眠っていた。 C56 160――通称「サルゴリラチンパンジー」。泰緬鉄道から帰ってきて何十年も経つのに、その異名だけはなぜか色濃く残っている。 帰国直後は国鉄の機関区を転々とし、そして老…
ウンコう日誌(第818号) 中央情報課

ウンコう日誌(第818号)

大阪民国の外れ――いや、外れというより “カオスの吹き溜まり” と呼ばれる芦原橋(本社前)。 そこに、時代から完全に取り残された一両が、今日ものそりとのそりと息をしていた。 緑の木炭動車・107号。 鼻先には煤で真っ黒になったガス発生炉。屋根上には、昔の農具か何かのような通風筒。 その姿は、害吉鉄道…
ウンコう(第817号) 中央情報課

ウンコう(第817号)

害吉鉄道・大阪ユニオン駅の薄明かりの下。 流線形に改造され、どこか戦前の亡霊のような姿をした C53形——**C5343「黒風号」**が、くぐもった低音を響かせて構内に現れた。 かつて大東亜の夢を担う高速旅客機関車として生まれたが、今は貨客混合の“裏仕事”専門。 鉄道帝が「これはワイの黒い翼や」と言…
ウンコう日誌(第816号) 中央情報課

ウンコう日誌(第816号)

コンクリ桟橋の朝は、海から吹く油じみた風と、どこの国の言語ともつかない怒号で始まる。そこにひょこ、と鼻先を出したのが——害吉鉄道の蓄電池動車《アシッド907》。 車体は濃い緑と薄い緑のツートン、鼻先には、いつ誰が付けたのか分からない巨大な排障器。元々は大阪民国の軍港で弾薬運搬をしていたが、戦後の混乱…
ウンコう日誌(第815号) 中央情報課

ウンコう日誌(第815号)

■ すっかり“害鉄の顔”になったD51(Д51) 大阪民国・害吉鉄道。 ユニオン駅からコンクリ桟橋へ、あるいは釜ヶ崎へ。 貨物も客車も、なんでも引っ張る雑多な鉄路の中で、いま“頼りになる古参”として働いているのが、この 樺太帰りのD51(Д51) だった。 ボイラー脇にはサハリンの煤が残り、テンダー…
ウンコう日誌(第814号) 中央情報課

ウンコう日誌(第814号)

大阪民国南部、夕暮れの 北津守駅前(きたつもり・ステーションフロント)。 コンクリの匂いと、どこの国の言語か分からんざわめきが入り混じる、害吉鉄道名物のごった煮空間だ。 そこへ、緑色の小さな蒸気動車・107号が「ぷしゅ〜〜」と白い息を吐きながら滑り込んできた。 時代に置いていかれすぎたこの車両は、な…
ウンコう日誌(第813号) 中央情報課

ウンコう日誌(第813号)

◆無限列車、害鉄へ堕つ かつて第四世界のどこかで“鬼殺しの列車”として恐れられた無限列車。 その異界での仕事を終えた後、行き場を失い、気づけば荒れ果てたコンクリ桟橋に打ち上げられていた。 害吉鉄道の整備員が最初に見つけたとき、機関車はすすけきっていたが、 どこか誇りをまとった異様な雰囲気があった。 …
ウンコう日誌(第812号) 中央情報課

ウンコう日誌(第812号)

害吉鉄道・大阪ユニオン駅の下層ホーム―― ディーゼルも電化も置いてけぼりのこの世界では、木炭を焚いて走る“木炭動車”がまだ現役だった。 緑色の車体に「107」の番号。屋根の上には年代物の機器が並び、車端には煤まみれの缶形のガス発生炉。 今日も大阪ユニオン駅の空気は、大阪クレオールと木炭の匂いで満ちて…
ウンコう日誌(第811話) 中央情報課

ウンコう日誌(第811話)

天塩炭鉱鉄道の最果てで石炭を引きずり続けていた黒いC58は、 じつは若い頃だけ害吉鉄道に出向していた“古い縁”の機関車だ。 芦原橋のあの薄汚れた詰所も、 世界中の労働者が降りてくるコンクリ桟橋の喧騒も、 実は全部“昔なじみ”。 だが時は流れ、天塩の炭鉱が沈み、 ベテランたちが一台、また一台と姿を消し…
ウンコう日誌(第810号) 中央情報課

ウンコう日誌(第810号)

蓄電池動車107号は、朝の大阪ユニオン駅で静かに目を開けた。屋根の上には煤が積もり、車体の緑色はくすんでいる。それでも107号は今日も仕事に向かうつもりらしい。 車掌がドア横を叩く。 「ヨッシャ107! 오늘도 아시와라前〜カマ사키直行やでぇ。バッテ리 まだ 살아있나? 落ちたら困んでホンマ。」 整…
ウンコう日誌(第809号) 中央情報課

ウンコう日誌(第809号)

大阪民国のコンクリ桟橋に、その黒光りする機関車がふらりと帰ってきた。 CK285——旧日本のC57が台湾鉄路を渡り歩き、老兵のような風格をまとって、害吉鉄道へ“亡命”してきたのである。 沿線の労働者たちはざわついた。 台湾での番号をそのまま掲げ、前照灯の下には「濱海町」と書かれた円形プレート。 サビ…
ウンコう日誌(第808号) 中央情報課

ウンコう日誌(第808号)

大阪民国の朝は、煙と怒号と、どこから流れてくるのか分からない謎の音楽で始まる。 蒸気動車107号は、今朝も煤を撒き散らしながらホームに滑り込んだ。 駅名標には「大阪ユニオン駅 豊里口」。 屋根は剥げ、ランプは緑色カビで覆われ、階段には誰かが食べた謎の赤い豆菓子が散乱している。 時代に取り残された鉄道…
ウンコう日誌(第807号) 中央情報課

ウンコう日誌(第807号)

泰緬鉄道から帰還したC56形の 160号機。 大阪民国の害吉鉄道に配属されると、妙なあだ名をつけられた。「サルゴリラチンパンジー」。 理由は簡単で、戦争帰りであちこち傷だらけ、煙突にはジャングルの煤がこびりつき、側面にはサルにつけられた爪痕らしきものまで残っていたからだった。 コンクリ桟橋駅の早朝。…
ウンコう日誌(第806号) 中央情報課

ウンコう日誌(第806号)

害吉鉄道の木炭動車・107号は、戦前に作られた古老の車両だ。 緑の塗装は何度も塗り替えられ、屋根の木炭ガス発生装置には錆が浮き、 冬の朝などは白い煙を吐きながら、のんびりと大阪ユニオン駅を出ていく。 今日も釜ヶ崎行き。 荷物車の後ろには、北の炭鉱や漁村から流れてきた労働者たちがぎゅうぎゅうに乗り込ん…
ウンコう日誌(第805号) 中央情報課

ウンコう日誌(第805号)

大阪民国の夜は、いつも湿っている。 ユニオン駅構内の煤けた蛍光灯の下、黒い流線型機関車C5343号が低く唸りを上げた。 「……あれが“鉄道帝”の黒い翼やで」 堀江新地の荷役が、タバコの煙を吐きながら呟いた。 戦前の夢、敗戦の残骸、そして再生不能の鉄屑。 その全てを飲み込みながら、害吉鉄道の黒き流星は…
ウンコう日誌(第804号) 中央情報課

ウンコう日誌(第804号)

朝の大阪ユニオン駅構内。 黒煙を上げるD51や、木炭動車の匂いが混じる中で、ひときわ静かに発車の時を待つ小さな緑の車両がいた。 ――107号、通称「青蓄(あおちく)」。 屋根の上には、時代遅れのバッテリーボックス。 パンタグラフも煙突もない。 かわりに、駅構内の片隅でうなりを上げる充電器から、青いケ…
ウンコう日誌(第803号) 中央情報課

ウンコう日誌(第803号)

害吉鉄道・芦原橋構内に、一台の黒ずんだ蒸気機関車が静かに眠っている。 その名はД51。かつて樺太(サハリン)で伐採材を運び、終戦とともに放置された旧国鉄D51が、数十年後、奇跡的に大阪民国へ戻ってきたという曰く付きの機関車である。 錆びついたボイラーには、まだキリル文字の銘板が残る。 「Д51-49…
ウンコう日誌(第802号) 中央情報課

ウンコう日誌(第802号)

コンクリ桟橋から大阪ユニオン駅まで、ひときわけたたましい音を立てて走る列車がある。 害吉鉄道の蒸気動車107号。 見た目はトラム、心臓はボイラー。燃料は時々木炭、時々拾い物の廃油。 「おい107、また蒸気圧足りへんぞ」 「しゃあないやん、きょう湿気高いし!」 機関士のアブドゥラ(ミャンマー人)と、ボ…
ウンコう日誌(第801号) 中央情報課

ウンコう日誌(第801号)

夜の大阪ユニオン駅。 煤けたプラットホームに、黒光りする蒸気動車がひっそりと停まっている。 その名も《無限列車》。正式には「コンクリ桟橋直通・釜ヶ崎経由木炭動車」だが、誰もそう呼ばない。 煙突からは黒い煙ではなく、焦げた木炭の匂いを含んだ灰色の蒸気が立ちのぼる。 機関車のボイラーには“愛国炭鉱組合”…
ウンコう日誌(第800号) 中央情報課

ウンコう日誌(第800号)

芦原橋のヤードに、夕方の汽笛がかすかに響く。 冬の冷たい風が、石炭でも重油でもない、どこか甘い木炭の匂いを運んでくる。 107号は古い木炭動車だった。 燃料タンクのかわりに積まれた木炭箱を、朝いちばんに点火して暖めるのが日課だ。 運転士の張(チャン)さんは、まだ若いのに腕が立つ。「この子は生き物だ」…
ウンコう日誌(第799号) 中央情報課

ウンコう日誌(第799号)

害吉鉄道・大阪ユニオン駅構内。 煙を上げず、静かに青いレールの上に鎮座する黒い機関車。そのナンバープレートには「C58 254」、そして赤いヘッドマークには「天塩」の二文字。 もとは北の果て――天塩炭鉱鉄道。 戦後間もなく、石炭を積んで走り続けた鉱山鉄道の英雄。 だが、炭鉱が閉じ、人も街も消えた時、…
ウンコう日誌(第798号) 中央情報課

ウンコう日誌(第798号)

大阪民国・芦原橋(本社前)駅。 ホームの片隅で、古い緑の蓄電池動車107号が静かに唸っていた。 昼過ぎの貨物列車を待つあいだ、車掌の朴さんは駅舎のベンチにもたれて煙草をくゆらせている。 ――電気は貯められるけど、人間の元気は貯められへんな。 そんな冗談をこぼしながら。 この107号、もとは大阪市電の…