1.5_安全企画部

ウンコう日誌(第836話) 中央情報課

ウンコう日誌(第836話)

大阪ユニオン駅を発って、線路が急に細くなったあたりで、列車は一度、深く息を吸う。 それが蒸気動車107号だった。 ディーゼルでも電車でもない。 屋根に短い煙突を載せ、腹の奥で湯を沸かしながら、ちょこちょこと走る。 害吉鉄道でも、いちばん時代に取り残された車両だ。 停まったのは、名も怪しい小さなホーム…
ウンコう日誌(第835号) 中央情報課

ウンコう日誌(第835号)

害吉鉄道・大阪ユニオン駅構内。 朝とも夕ともつかぬ灰色の時間帯、青い線路の上に、煤をまとったC57が止まっていた。 ボイラーの側面には、かつて台湾で名乗っていた名残――CK285の記憶が、薄く、しかし確かに染みついている。 この機関車は、日本を出て、南へ渡り、また戻ってきた。 帝国の時代に輸出され、…
ウンコう日誌(第834号) 中央情報課

ウンコう日誌(第834号)

木炭動車は、不逞町駅でいったん息を整えていた。 屋根の上の木炭ガス発生炉は、もう新品の角などどこにも残っていない。鉄板は熱で歪み、継ぎ当てだらけで、ところどころ別の時代のボルトがねじ込まれている。炭を焚くたび、甘いような、焦げたような、どこか懐かしい匂いが漂った。 駅舎の前で、男が炭俵を下ろす。 「…
ウンコう日誌(第833号) 中央情報課

ウンコう日誌(第833号)

そのC56は、帰ってきた、という言い方が一番近かった。 泰緬鉄道。地図の上では一本の細い線に過ぎない場所から、時間と死体と湿気だけを腹いっぱいに詰め込んで。 害吉鉄道・大阪ユニオン駅の片隅、貨物線の先で、C56はゆっくりと息を吐いた。吐いた息はもう蒸気ではなく、黒い埃だった。 「おお……また生きとっ…
ウンコう日誌(第832号) 中央情報課

ウンコう日誌(第832号)

大阪民国・害吉鉄道の朝は遅い。 それでも、この線区だけは必ず動く。 大阪ユニオン駅から芦原橋(本社前)を経て、釜ヶ崎へ向かう蓄電池動車。石炭も軽油も惜しい時代、電気だけが頼りの、時代に取り残された小さな車両だ。 まだ空が白みきらない時間、簡易ホームには人が集まっている。 背中に荷物を背負った者、寝袋…
賀正新年2026 中央情報課

賀正新年2026

害吉鉄道の元旦は、いつも音から始まる。 除夜の汽笛が終わると同時に、機関庫の奥で眠っていた C12 が、年が改まったことを確かめるように、短く、慎重に蒸気を吐いた。 この新年行事の正式名称は、賀正新年。 誰も「合唱」などとは言っていない。 ただ結果として、音が重なり、声が混じり、勝手に和声のようなも…
ウンコう日誌(第831号) 中央情報課

ウンコう日誌(第831号)

大晦日の大阪民国は、昼と夜の境目が曖昧になる。 大阪ユニオン駅では、年越しのカウントダウンよりも、仕事と移動の方が優先される人間たちが、静かに集まってくる。 青いレールの上に据えられたホイットコムの機関車は、年季の入った代用客車を一両だけ従えていた。 本来は貨物用の機関車だが、今夜は旅客も引く。害吉…
ウンコう日誌(第830号) 中央情報課

ウンコう日誌(第830号)

そのC11は、もともと八つ墓村行きやった。 地図の端にしか載らん支線、盆地の底で終わる、あの不吉な終点。 廃止が決まった日、機関庫の帳簿から名前が消えた。 行き先欄は空白、用途欄には赤字で一言。 「不要」 それを拾ったんが大阪民国や。 「ほっといたら鉄くずやで」 「いや、まだ動く。代用客車引かせたら…
ウンコう日誌(第829号) 中央情報課

ウンコう日誌(第829号)

害吉鉄道の大阪ユニオン駅構内で、C53はいつも浮いていた。 同じ蒸気機関車でも、D51や9600のような「いかにも現場」という顔つきではない。流線形のボイラー、長い車体、細身の足回り。もともと幹線急行用として生まれた機関車が、なぜか貨物と人夫と混沌を運ぶ害吉鉄道に流れ着いている。 今日も大阪ユニオン…
ウンコう日誌(第828号) 中央情報課

ウンコう日誌(第828号)

その蒸気動車は、害吉鉄道の中でもいちばん中途半端な存在だった。 蒸気機関車ほどの力はなく、かといってディーゼルカーのような新しさもない。 石炭を焚き、ボイラーを唸らせながら、単行でちょこちょこと走る――まさに「時代に取り残された」車両だった。 車体番号は107。 大阪ユニオン駅と芦原橋(本社前)を結…
ウンコう日誌(第827号) 中央情報課

ウンコう日誌(第827号)

その機関車は、どこか言葉を失ったような顔をしていた。 黒い塗装はくすみ、煙室扉の赤いナンバープレートは擦り切れている。 よく見れば、番号は日本式の「D51」だが、どこか字面が歪み、 現地で付け替えられたようなД51の影を残していた。 かつてこの機関車は、樺太の奥地を走っていた。 森林鉄道でも、炭鉱専…
ウンコう日誌(第825号) 中央情報課

ウンコう日誌(第825号)

――それは、かつて「無限列車」と呼ばれていた。 終点という概念を持たず、同じ区間を、同じ時刻表で、同じ顔ぶれを乗せて、ただ走り続けるために造られた列車だった。 旅ではなく、輸送でもなく、「止まらないこと」そのものが目的だった。 だが時代が変わり、無限であることは無用になった。 レールは途中で切られ、…
ウンコう日誌(第824号) 中央情報課

ウンコう日誌(第824号)

大阪民国・害吉鉄道。 大阪ユニオン駅と芦原橋(本社前)を結ぶウンコう区間の朝は、いつも煤と湿った潮の匂いが混じっている。 その中を、今日も木炭動車107号は、青いレールの上をゆっくりと転がっていた。 屋根の上には、無理やり積まれた木炭箱。 本来なら森林鉄道か山奥の簡易線に押し込められるはずの代物だが…
ウンコう日誌(第823号) 中央情報課

ウンコう日誌(第823号)

天塩炭鉱鉄道で「社型C58」と呼ばれていたその機関車は、もともと炭鉱主の見栄と技術者の意地が生んだ存在だった。 国鉄がようやくC58を量産し始めた頃、天塩の炭鉱会社は「待っていられない」と判断し、国鉄設計をほぼそのまま写した図面で、自前の工場にC58を造らせた。石炭と鉄と人手は潤沢だった。国に頼らず…
ウンコう日誌(第822号) 中央情報課

ウンコう日誌(第822号)

夜明け前、コンクリ桟橋の空気は潮と油と、言葉にならない雑多な匂いが混じっていた。 107号はまだ眠っているように見えたが、屋根の蓄電箱の奥では、昨夜ため込んだ電気が静かに目を覚ましていた。石炭も軽油もいらない。音も煙も出さない。ここではそれが都合がよかった。 ホーム脇の詰所から、係員が顔を出す。 「…
ウンコう日誌(第821号) 中央情報課

ウンコう日誌(第821号)

──害吉鉄道・大阪ユニオン駅にて 台湾の山岳線を駆け抜けていた名機・CK285は、海を越えて大阪民国へ流れ着いた。 害吉鉄道の車庫係に言わせれば、 「또 하나 이상한の来よったで……どこから拾うて来たんや社長(サッチャン)……」 と頭を抱えるしかない厄物のひとつだった。 だが社長こと“鉄道帝”は、胸…
ウンコう日誌(第820号) 中央情報課

ウンコう日誌(第820号)

——大阪民国・混沌の街をコトコト走る“湯気の電車”—— 蒸気動車107号は、害吉鉄道の中でもひときわ異様な存在だった。 大阪ユニオン駅の片隅に、煤だらけの煙突をちょこんと生やし、 電車のようで電車でなく、汽車のようで汽車でもない。 戦前に北海道の片田舎で走っていたというが、 なぜか第四世界の大阪民国…
ウンコう日誌(第819号) 中央情報課

ウンコう日誌(第819号)

害吉鉄道・大阪ユニオン駅の片隅。蒸気機関車たちの溜まり場になっている古い検修庫に、黒光りした小ぶりの機関車が静かに眠っていた。 C56 160――通称「サルゴリラチンパンジー」。泰緬鉄道から帰ってきて何十年も経つのに、その異名だけはなぜか色濃く残っている。 帰国直後は国鉄の機関区を転々とし、そして老…
ウンコう日誌(第818号) 中央情報課

ウンコう日誌(第818号)

大阪民国の外れ――いや、外れというより “カオスの吹き溜まり” と呼ばれる芦原橋(本社前)。 そこに、時代から完全に取り残された一両が、今日ものそりとのそりと息をしていた。 緑の木炭動車・107号。 鼻先には煤で真っ黒になったガス発生炉。屋根上には、昔の農具か何かのような通風筒。 その姿は、害吉鉄道…
ウンコう(第817号) 中央情報課

ウンコう(第817号)

害吉鉄道・大阪ユニオン駅の薄明かりの下。 流線形に改造され、どこか戦前の亡霊のような姿をした C53形——**C5343「黒風号」**が、くぐもった低音を響かせて構内に現れた。 かつて大東亜の夢を担う高速旅客機関車として生まれたが、今は貨客混合の“裏仕事”専門。 鉄道帝が「これはワイの黒い翼や」と言…
ウンコう日誌(第816号) 中央情報課

ウンコう日誌(第816号)

コンクリ桟橋の朝は、海から吹く油じみた風と、どこの国の言語ともつかない怒号で始まる。そこにひょこ、と鼻先を出したのが——害吉鉄道の蓄電池動車《アシッド907》。 車体は濃い緑と薄い緑のツートン、鼻先には、いつ誰が付けたのか分からない巨大な排障器。元々は大阪民国の軍港で弾薬運搬をしていたが、戦後の混乱…
ウンコう日誌(第815号) 中央情報課

ウンコう日誌(第815号)

■ すっかり“害鉄の顔”になったD51(Д51) 大阪民国・害吉鉄道。 ユニオン駅からコンクリ桟橋へ、あるいは釜ヶ崎へ。 貨物も客車も、なんでも引っ張る雑多な鉄路の中で、いま“頼りになる古参”として働いているのが、この 樺太帰りのD51(Д51) だった。 ボイラー脇にはサハリンの煤が残り、テンダー…
ウンコう日誌(第814号) 中央情報課

ウンコう日誌(第814号)

大阪民国南部、夕暮れの 北津守駅前(きたつもり・ステーションフロント)。 コンクリの匂いと、どこの国の言語か分からんざわめきが入り混じる、害吉鉄道名物のごった煮空間だ。 そこへ、緑色の小さな蒸気動車・107号が「ぷしゅ〜〜」と白い息を吐きながら滑り込んできた。 時代に置いていかれすぎたこの車両は、な…
ウンコう日誌(第813号) 中央情報課

ウンコう日誌(第813号)

◆無限列車、害鉄へ堕つ かつて第四世界のどこかで“鬼殺しの列車”として恐れられた無限列車。 その異界での仕事を終えた後、行き場を失い、気づけば荒れ果てたコンクリ桟橋に打ち上げられていた。 害吉鉄道の整備員が最初に見つけたとき、機関車はすすけきっていたが、 どこか誇りをまとった異様な雰囲気があった。 …
ウンコう日誌(第812号) 中央情報課

ウンコう日誌(第812号)

害吉鉄道・大阪ユニオン駅の下層ホーム―― ディーゼルも電化も置いてけぼりのこの世界では、木炭を焚いて走る“木炭動車”がまだ現役だった。 緑色の車体に「107」の番号。屋根の上には年代物の機器が並び、車端には煤まみれの缶形のガス発生炉。 今日も大阪ユニオン駅の空気は、大阪クレオールと木炭の匂いで満ちて…