1.5_安全企画部

ウンコう日誌(第813号) 中央情報課

ウンコう日誌(第813号)

◆無限列車、害鉄へ堕つ かつて第四世界のどこかで“鬼殺しの列車”として恐れられた無限列車。 その異界での仕事を終えた後、行き場を失い、気づけば荒れ果てたコンクリ桟橋に打ち上げられていた。 害吉鉄道の整備員が最初に見つけたとき、機関車はすすけきっていたが、 どこか誇りをまとった異様な雰囲気があった。 …
ウンコう日誌(第812号) 中央情報課

ウンコう日誌(第812号)

害吉鉄道・大阪ユニオン駅の下層ホーム―― ディーゼルも電化も置いてけぼりのこの世界では、木炭を焚いて走る“木炭動車”がまだ現役だった。 緑色の車体に「107」の番号。屋根の上には年代物の機器が並び、車端には煤まみれの缶形のガス発生炉。 今日も大阪ユニオン駅の空気は、大阪クレオールと木炭の匂いで満ちて…
ウンコう日誌(第811話) 中央情報課

ウンコう日誌(第811話)

天塩炭鉱鉄道の最果てで石炭を引きずり続けていた黒いC58は、 じつは若い頃だけ害吉鉄道に出向していた“古い縁”の機関車だ。 芦原橋のあの薄汚れた詰所も、 世界中の労働者が降りてくるコンクリ桟橋の喧騒も、 実は全部“昔なじみ”。 だが時は流れ、天塩の炭鉱が沈み、 ベテランたちが一台、また一台と姿を消し…
ウンコう日誌(第810号) 中央情報課

ウンコう日誌(第810号)

蓄電池動車107号は、朝の大阪ユニオン駅で静かに目を開けた。屋根の上には煤が積もり、車体の緑色はくすんでいる。それでも107号は今日も仕事に向かうつもりらしい。 車掌がドア横を叩く。 「ヨッシャ107! 오늘도 아시와라前〜カマ사키直行やでぇ。バッテ리 まだ 살아있나? 落ちたら困んでホンマ。」 整…
ウンコう日誌(第809号) 中央情報課

ウンコう日誌(第809号)

大阪民国のコンクリ桟橋に、その黒光りする機関車がふらりと帰ってきた。 CK285——旧日本のC57が台湾鉄路を渡り歩き、老兵のような風格をまとって、害吉鉄道へ“亡命”してきたのである。 沿線の労働者たちはざわついた。 台湾での番号をそのまま掲げ、前照灯の下には「濱海町」と書かれた円形プレート。 サビ…
ウンコう日誌(第808号) 中央情報課

ウンコう日誌(第808号)

大阪民国の朝は、煙と怒号と、どこから流れてくるのか分からない謎の音楽で始まる。 蒸気動車107号は、今朝も煤を撒き散らしながらホームに滑り込んだ。 駅名標には「大阪ユニオン駅 豊里口」。 屋根は剥げ、ランプは緑色カビで覆われ、階段には誰かが食べた謎の赤い豆菓子が散乱している。 時代に取り残された鉄道…
ウンコう日誌(第807号) 中央情報課

ウンコう日誌(第807号)

泰緬鉄道から帰還したC56形の 160号機。 大阪民国の害吉鉄道に配属されると、妙なあだ名をつけられた。「サルゴリラチンパンジー」。 理由は簡単で、戦争帰りであちこち傷だらけ、煙突にはジャングルの煤がこびりつき、側面にはサルにつけられた爪痕らしきものまで残っていたからだった。 コンクリ桟橋駅の早朝。…
ウンコう日誌(第806号) 中央情報課

ウンコう日誌(第806号)

害吉鉄道の木炭動車・107号は、戦前に作られた古老の車両だ。 緑の塗装は何度も塗り替えられ、屋根の木炭ガス発生装置には錆が浮き、 冬の朝などは白い煙を吐きながら、のんびりと大阪ユニオン駅を出ていく。 今日も釜ヶ崎行き。 荷物車の後ろには、北の炭鉱や漁村から流れてきた労働者たちがぎゅうぎゅうに乗り込ん…
ウンコう日誌(第805号) 中央情報課

ウンコう日誌(第805号)

大阪民国の夜は、いつも湿っている。 ユニオン駅構内の煤けた蛍光灯の下、黒い流線型機関車C5343号が低く唸りを上げた。 「……あれが“鉄道帝”の黒い翼やで」 堀江新地の荷役が、タバコの煙を吐きながら呟いた。 戦前の夢、敗戦の残骸、そして再生不能の鉄屑。 その全てを飲み込みながら、害吉鉄道の黒き流星は…
ウンコう日誌(第804号) 中央情報課

ウンコう日誌(第804号)

朝の大阪ユニオン駅構内。 黒煙を上げるD51や、木炭動車の匂いが混じる中で、ひときわ静かに発車の時を待つ小さな緑の車両がいた。 ――107号、通称「青蓄(あおちく)」。 屋根の上には、時代遅れのバッテリーボックス。 パンタグラフも煙突もない。 かわりに、駅構内の片隅でうなりを上げる充電器から、青いケ…
ウンコう日誌(第803号) 中央情報課

ウンコう日誌(第803号)

害吉鉄道・芦原橋構内に、一台の黒ずんだ蒸気機関車が静かに眠っている。 その名はД51。かつて樺太(サハリン)で伐採材を運び、終戦とともに放置された旧国鉄D51が、数十年後、奇跡的に大阪民国へ戻ってきたという曰く付きの機関車である。 錆びついたボイラーには、まだキリル文字の銘板が残る。 「Д51-49…
ウンコう日誌(第802号) 中央情報課

ウンコう日誌(第802号)

コンクリ桟橋から大阪ユニオン駅まで、ひときわけたたましい音を立てて走る列車がある。 害吉鉄道の蒸気動車107号。 見た目はトラム、心臓はボイラー。燃料は時々木炭、時々拾い物の廃油。 「おい107、また蒸気圧足りへんぞ」 「しゃあないやん、きょう湿気高いし!」 機関士のアブドゥラ(ミャンマー人)と、ボ…
ウンコう日誌(第801号) 中央情報課

ウンコう日誌(第801号)

夜の大阪ユニオン駅。 煤けたプラットホームに、黒光りする蒸気動車がひっそりと停まっている。 その名も《無限列車》。正式には「コンクリ桟橋直通・釜ヶ崎経由木炭動車」だが、誰もそう呼ばない。 煙突からは黒い煙ではなく、焦げた木炭の匂いを含んだ灰色の蒸気が立ちのぼる。 機関車のボイラーには“愛国炭鉱組合”…
ウンコう日誌(第800号) 中央情報課

ウンコう日誌(第800号)

芦原橋のヤードに、夕方の汽笛がかすかに響く。 冬の冷たい風が、石炭でも重油でもない、どこか甘い木炭の匂いを運んでくる。 107号は古い木炭動車だった。 燃料タンクのかわりに積まれた木炭箱を、朝いちばんに点火して暖めるのが日課だ。 運転士の張(チャン)さんは、まだ若いのに腕が立つ。「この子は生き物だ」…
ウンコう日誌(第799号) 中央情報課

ウンコう日誌(第799号)

害吉鉄道・大阪ユニオン駅構内。 煙を上げず、静かに青いレールの上に鎮座する黒い機関車。そのナンバープレートには「C58 254」、そして赤いヘッドマークには「天塩」の二文字。 もとは北の果て――天塩炭鉱鉄道。 戦後間もなく、石炭を積んで走り続けた鉱山鉄道の英雄。 だが、炭鉱が閉じ、人も街も消えた時、…
ウンコう日誌(第798号) 中央情報課

ウンコう日誌(第798号)

大阪民国・芦原橋(本社前)駅。 ホームの片隅で、古い緑の蓄電池動車107号が静かに唸っていた。 昼過ぎの貨物列車を待つあいだ、車掌の朴さんは駅舎のベンチにもたれて煙草をくゆらせている。 ――電気は貯められるけど、人間の元気は貯められへんな。 そんな冗談をこぼしながら。 この107号、もとは大阪市電の…
ウンコう日誌(第797号) 中央情報課

ウンコう日誌(第797号)

芦原橋の機関庫に、黒光りする老機関車が静かに息をついていた。 ボイラーの脇には、消えかけた「CK285」の銘板。戦後台湾に残され、三十年近く熱帯の線路を走り抜けた後、民国政府の払い下げで大阪民国に戻ってきた“帰還兵”である。 かつての仲間はもういない。だが、害吉鉄道の社長がこの機関車を見て言った。 …
ウンコう日誌(第796号) 中央情報課

ウンコう日誌(第796号)

害吉鉄道の車庫の奥で、誰にも見向きされず眠っていた緑の小型蒸気動車――通称「阿倍野のモクモク号」が、ひさびさに煙突を黒々と光らせていた。 鉄道帝の気まぐれで、芦原橋(本社前)〜釜ヶ崎支線の臨時列車に抜擢されたのだ。 「おーい、煙が逆流してんで!」 車庫係のベトナム人整備士タインが、油まみれの手ぬぐい…
ウンコう日誌(第795話) 中央情報課

ウンコう日誌(第795話)

害吉鉄道・芦原橋本社前。夕暮れのヤードに、黒く煤けたC56形が静かに止まっていた。 機番は「C56160」。そのナンバープレートの下には、小さく「かばちゃエクスプレス」と書かれた札。だが誰もその由来を知らない。 この機関車は、かつて泰緬鉄道を走った帰還機だった。ジャングルの湿気と赤土をまとい、戦後の…
ウンコう日誌(第794号) 中央情報課

ウンコう日誌(第794号)

害吉鉄道・芦原橋(本社前)駅の片隅。 灰色の空の下、木炭動車107号は、今日も煙突から薄く白い煙を吐き出していた。ディーゼルカーが主力となった今、木炭動車の姿は珍しく、整備工場でも「よう動いとるなあ」と言われるほどの老体である。 運転士の老金(オ・グム)は、帽子を目深にかぶりながらぼそりとつぶやいた…
ウンコう日誌(第793号) 中央情報課

ウンコう日誌(第793号)

コンクリ桟橋駅に黒光りする流線型C53が到着した。 形式番号は「C5343」。本来は帝都本線の花形だったが、敗戦とともに本国から放逐され、今は大阪民国の害吉鉄道で貨客混合列車を牽いている。 「おまえ、えらいツヤツヤしてるやんけ。どこで磨いてもろたん?」 緑の路面電車が隣の側線から声をかける。 「・・…
ウンコう日誌(第792号) 中央情報課

ウンコう日誌(第792号)

緑の蓄電池動車は、今日も静かにホームを離れた。 パンタグラフも煙突もないその車体は、夜の街のざわめきの中に溶けていく。 車掌は片手義手の老婆。かつて「電気の娘」と呼ばれた蓄電池職工で、車内では今も古い歌を口ずさむ。 ♪どこへ行くのか この街は ♪煙と鉄と 人の夢 終点は釜ヶ崎。 駅舎の灯りは薄く、看…
ウンコう日誌(第791号) 中央情報課

ウンコう日誌(第791号)

かつて岡山県の山奥を走っていたC11形蒸気機関車。 八つ墓村の村人を運び、血の匂いと怨霊の呻きに包まれたその鉄路は、ある日を境に封鎖された。 だが時は流れ──。 老朽化した車体を捨てるでもなく、どこからともなくやって来た黒塗りのトレーラーがそれを載せ、 「害吉鉄道行き」とだけ書かれた伝票を残して消え…
ウンコう日誌(第790号) 中央情報課

ウンコう日誌(第790号)

害吉鉄道の中でも最古参のひとつ、「107号蒸気動車」。 大阪ユニオン駅から芦原橋(本社前)を経て、釜ヶ崎へ向かう。 車体はくたびれ、ボイラーの煙突からは時々しか煙が出ない。 それでも、朝の冷えた空気の中で「しゅぽ、しゅぽ」と息づいていた。 駅名標には「釜ヶ崎支線 堀江新地方面」とある。 小さなプラッ…
ウンコう日誌(第789号) 中央情報課

ウンコう日誌(第789号)

戦後の混乱期、大阪民国の港・コンクリ桟橋に、錆びた貨車を曳いて一台の黒い蒸機が流れ着いた。 その名は「Д51」。ソ連式の銘板を残したまま、樺太の凍土を越えてきた“亡霊機関車”である。 「オレ、もとは北海道のD51や。けど、終戦後に向こうの軍に接収されてな、ロシアの雪原を走っとったんや。」 そう語るよ…