定時報

ウンコう日誌(第765号) 中央情報課

ウンコう日誌(第765号)

コンクリ桟橋から遠く離れた「堀江新地」の片隅に、木賃宿や飲み屋の影にひっそりと「南堀江口駅」がある。そこに停まっているのが、害吉鉄道の蒸気動車107号。 見た目は市電の小型電車のようだが、屋根には煤けた煙突が突き出し、車内の一角には小さなボイラーが据え付けられている。石炭の代わりに、燃料は木炭や時に…
ウンコう日誌(第764号) 中央情報課

ウンコう日誌(第764号)

かつて帝国の北辺を走っていた貨物用機関車D51は、戦後に樺太ごとソ連に引き渡され「Д51」として酷使された。極寒の地で薪も石炭も足りず、やがては泥炭や伐採残材を焚き、車体は煤と氷で真っ黒に覆われた。ソ連の整備工場では雑に補修され、側面にはキリル文字が打刻されたまま放置されていた。 時代が変わり、廃車…
ウンコう日誌(第763号) 中央情報課

ウンコう日誌(第763号)

害吉鉄道の片隅、堀江新地から釜ヶ崎に向かう短い区間を、今なお走り続ける古い木炭動車がある。車体番号107。 戦時中の燃料難に対応するために作られたこの車両は、石炭やガソリンが手に入らぬ時代に、山から切り出した木を炭に変えて走らせた。時代遅れの産物として忘れられてもおかしくなかったが、大阪民国の混沌は…
ウンコう日誌(第762号) 中央情報課

ウンコう日誌(第762号)

大阪民国・大阪ユニオン駅の10番線。 青いレールの上に、今日も「無限列車」が静かに煙を吐いていた。機関士は、かつて大陸の戦線で補給列車を走らせた老人で、「この列車は時間も距離も関係なく走る」と真顔で言う。乗客はそれを冗談だと思って笑うが、釜ヶ崎に着くまでに何度も夜が明け、車窓に見える景色がアジアのど…
ウンコう日誌(第761号) 中央情報課

ウンコう日誌(第761号)

害吉鉄道の蓄電池動車・407号は、戦前に製造された古参車両だ。もとは軍需工場の構内輸送用として作られたが、戦後の混乱期に払い下げられ、何度も塗装と部品を替えながら大阪民国を走り続けている。 この車両の特徴は、天井に並んだ巨大なバッテリー換気口と、車体側面にある手回し充電口だ。沿線の小さな変電所で、駅…
ウンコう日誌(第760号) 中央情報課

ウンコう日誌(第760号)

かつて北海道の天塩炭鉱鉄道で、石炭を満載した長い貨物列車を力強く牽いていた社型C58。冬は吹雪、夏は霧と虫の群れ、それでも黙々と走り続けた働き者だった。 しかし、炭鉱閉山とともに売却され、遠く離れた大阪民国・害吉鉄道へと渡ってきた。 ここは湿気と潮風にまみれ、真夏のコンクリ桟橋には熱帯の蒸気がこもる…
ウンコう日誌(第759号) 中央情報課

ウンコう日誌(第759号)

害吉鉄道の蒸気動車107号は、もともと昭和初期に大阪市内の路面電車として造られた車両だった。戦時中にガソリン不足で廃車寸前となったが、戦後すぐに害吉鉄道が「貨物列車の後ろで客も運べる便利な車」として譲り受け、屋根に小型の蒸気ボイラーを積み、煙突を突き出して蒸気動車に改造された。 大阪ユニオン駅を出た…
ウンコう日誌(第758号) 中央情報課

ウンコう日誌(第758号)

大阪民国・害吉鉄道。 ここはアジアの混沌がすべて凝縮されたような鉄道会社であり、貨物輸送の“ついで”に旅客を乗せる、極めて前時代的な運行体系で知られる。 ある日、コンクリ桟橋に見慣れぬ機関車が漂着した。 ナンバープレートには「CK285」の文字。台湾から海を越えてやってきた、元・日本国鉄C57型の生…
ウンコう日誌(第757号) 中央情報課

ウンコう日誌(第757号)

「この線、昔は貨物列車が5分おきに通ってたんや。」 コンクリ桟橋の片隅で、静かに待機する木炭動車107号。くすんだ緑のボディ、煤けた屋根、そして側面の“107”の番号。その姿は、戦時中の記憶を今に伝える生きた遺物だ。 この車両が造られたのは、大東亜戦争も中盤の頃。石油はおろか、石炭も入らず、頼れるの…
ウンコう日誌(第755号) 中央情報課

ウンコう日誌(第755号)

大阪民国。 時代に置き去りにされた都市の片隅で、今日もまた緑色の蓄電池動車が「大阪ユニオン駅」を静かに出発する。 行き先は、釜ヶ崎。 車番は107。戦後復興期に旧国鉄が試験的に導入した車両を、廃車直前に害吉鉄道が二束三文で買い取り、自社の整備工場で蓄電池式に改造したものである。パンタグラフは最初から…
ウンコう日誌(第754号) 中央情報課

ウンコう日誌(第754号)

これは、泰緬鉄道から引き揚げられたC56形160号機が牽引する、害吉鉄道のとある列車。大阪ユニオン駅の片隅にある砂利まみれの12番線から、今夜もひっそりと出発する。客車はかつての三等車を改造したもので、屋根には家財道具と動物が積まれている。客車の車内より屋根の上の方が賑やかだと言われる。 この列車の…
ウンコう日誌(第753号) 中央情報課

ウンコう日誌(第753号)

害吉鉄道の釜ヶ崎支線。その終点にぽつんと佇む木造の小駅「南中市場前駅」には、今や動く列車がほとんど来ない。だが、日が昇る前、まだ路地に酔客の影が残るころ、小さな振動とともにカタコトと現れるのが「107号蒸気動車」である。 107号は、かつて大阪民国の中心部で活躍していた小型の路面蒸気動車だった。木炭…
ウンコう日誌(第752号) 中央情報課

ウンコう日誌(第752号)

コンクリ桟橋の夕暮れ、貨物ヤードの片隅で眠っていた一両の黒い流線型蒸気機関車が、唐突に煙を噴いた。 その名は C5343。 戦前、軍用列車専用の試作機として極秘裏に製造され、「黒い鯨(ブラック・クジラ)」の異名を持っていた。だが、あまりに重く、あまりに速すぎて当時の軌道を破壊するという前代未聞の事故…
ウンコう日誌(第751号) 中央情報課

ウンコう日誌(第751号)

大阪民国・芦原橋。まだ空も白みきらぬ午前4時半。コトン……コトン……と、乾いたリズムで目を覚ますのは、害吉鉄道の木炭動車107号車。戦前に製造され、戦後の混乱期に台湾から戻され、いつしかこの多民族都市の片隅に流れ着いた。 107号車は、朝焼けの釜ヶ崎支線を走る。乗客は、眠たげな目をこすりながら積み荷…
ウンコう日誌(第750号) 中央情報課

ウンコう日誌(第750号)

害吉鉄道・コンクリ桟橋駅。かつて大陸への夢と悲しみを載せて走った一両の蒸気機関車が、今またその煤けた車体を軋ませながらホームに滑り込んできた。 先頭に立つのは、旧日本帝国の名機・D51型蒸気機関車──ではない。前照灯の下にはキリル文字で「Д51」と記されている。ソ連領時代のサハリン(樺太)で鹵獲・改…
ウンコう日誌(第749号) 中央情報課

ウンコう日誌(第749号)

コンクリ桟橋発、釜ヶ崎行き第37便。 けたたましい警笛もなく、C12 650号機は静かに出発した。 かつて日本本土の地方ローカル線で走っていた小型のタンク式蒸気機関車・C12は、終戦後に台湾を経て、なぜか今や大阪民国を走っている。全身ススまみれ、塗装も剥がれかけ。そんな姿でなおも「貨客混載」の使命を…
ウンコう日誌(第748号) 中央情報課

ウンコう日誌(第748号)

害吉鉄道・北津守機関区。 そこには、どこから持ち込まれたのか判然としないアメリカ製の小型ディーゼル機関車が1両、居ついていた。銘板には「WHITCOMB」の文字。戦後に余剰となった占領軍向け車両の転売品とも、朝鮮戦争で流れ着いた戦地復旧用とも、あるいは香港の波止場から大阪民国に密輸されたとも言われて…
ウンコう日誌(第747号) 中央情報課

ウンコう日誌(第747号)

大阪民国・北津守駅の片隅。半ば打ち捨てられたようなホームに、緑の蓄電池動車「107号」は、無言のまま停車していた。 この車両は、かつて内地の軍需工場で構内輸送に使われていたが、戦後に払い下げられ、各地を転々とした末、ついに害吉鉄道に拾われた。騒音も煤煙も出さないその静けさは、害吉の喧騒には不釣り合い…
ウンコう日誌(第746号) 中央情報課

ウンコう日誌(第746号)

無尽機関 「……ああ、あの機関車かい。あれは“無尽機関”って呼ばれてる」 コンクリ桟橋駅の片隅、古びた詰所で茶をすすりながら駅員のヤマカミはそう呟いた。 「昔は、どこまでも走り続ける列車だったんだとよ。寝て起きてもまだ走ってる。昼も夜も、線路が続くかぎり、ね。客が降りようが、汽車は止まらねぇ。そんな…
ウンコう日誌(第745号) 中央情報課

ウンコう日誌(第745号)

昭和どころか、大正すら通り越した――そんな鉄道車両が、今日も煙を吐きながら北津守の街外れを走る。緑色の車体に、妙にでかい煙突。そして何より、その車両に人が乗っているのが信じられない。 これは、害吉鉄道の蒸気動車107号。正式には「蒸気内燃混合軽便旅客輸送装置」として登録されているが、誰もそんな長った…
ウンコう日誌(第744号) 中央情報課

ウンコう日誌(第744号)

その蒸気機関車は、かつて北海道の炭鉱町——天塩の奥地を、石炭を吐きながら走っていた。 社型C58。 国鉄型とは似て非なる、鉱山会社が自前で整備し、修理し、動かしていた野生の機関車。 型番もプレートも何もかもが「会社のやりかた」で付けられており、構造的にはC58っぽいが、もはやC58ではない。 ——そ…
ウンコう日誌(第743号) 中央情報課

ウンコう日誌(第743号)

大阪ユニオン駅の6.5番線、木炭動車107号がぷすんぷすんと煙を吐いていた。 「今日も混んでるなあ……いや、人間の話ちゃうで」 駅員のキム・田中がぼやく。車内には、買い出し帰りのオモニ、釜ヶ崎行きの荷車、何かの部品、あとなぜか生きた鶏までいる。害吉鉄道の木炭107号は、もともと軽便鉄道用のディーゼル…
ウンコう日誌(第742号) 中央情報課

ウンコう日誌(第742号)

害吉鉄道・南津守貨物ヤード。 焼けたコンクリートの照り返しの中、CK285形蒸気機関車が静かに息を潜めていた。かつて台湾の平渓線で山岳貨物を引いていたこの黒き老機関車は、今では害吉鉄道に籍を置き、「焼酎特急・黒潮号」として再び現役に返り咲いている。 今日の任務は、奄美・笠利港からフェリーでコンクリ桟…
ウンコう日誌(第741号) 中央情報課

ウンコう日誌(第741号)

コンクリ桟橋駅には、世界中の雑踏と油煙が絡み合っていた。重油とパクチーと香辛料、そして潮風。干物屋の廃材を組み直したような屋台の奥で、男たちは黙って缶ビールを飲み、次の船便や仕事の噂話をしていた。 そのホームの一角に、くすんだ水色の車体が静かに停まっていた。キハ40。古びたディーゼルカー。正面の丸い…