中央情報課 30 1月 2026 ウンコう日誌(第846号) 木炭動車107号は、今日も大阪ユニオン駅の構内で黒い息を吐いていた。 屋根の上の木炭ガス発生装置は、まるで臓物を外に晒された胃袋のようで、蓋の隙間から甘苦い煙がゆっくりと滲み出している。 この車両はディーゼルにも電気にもなれなかった。 石油は高く、電線は盗まれ、蓄電池はいつも足りない。 だから木炭を… 続きを読む
中央情報課 28 1月 2026 ウンコう日誌(第845号) それは、もう日本の鉄道ではなかった。 黒光りするC57の車体には、うっすらと南国の埃が残っている。 石炭の匂いに混じる、甘い湿気と油の匂い。 この機関車は一度、海を渡った。 台湾総督府鉄道で「CK285」と呼ばれていた頃、 彼女は平地を全力で駆け、山では喘ぎ、 砂糖と米と人を積んだ貨車を引いて走った… 続きを読む
中央情報課 26 1月 2026 ウンコう日誌(第844号) 大阪民国の夜は、いつも電圧が低い。 ネオンはちらつき、言葉は混線し、人も貨物も目的地をはっきり言わない。 芦原橋(本社前)駅のはずれ、コンクリート粉と魚油の匂いが混じる留置線で、 蓄電池動車四〇七号は静かに息を潜めていた。 エンジン音はない。 あるのは、腹の奥でじんわり熱を持つ鉛蓄電池の鼓動だけだ。… 続きを読む
中央情報課 24 1月 2026 ウンコう日誌(第843号) それは「帰りの機関車」だった。 前面に掲げられた番号は C56 160。 だが、機関区でも労務者宿でも、そんな数字で呼ぶ者はいなかった。 「サルゴリラチンパンジーが来たぞ」 誰かがそう言えば、皆が黙る。 笑う者はいない。縁起でもないからだ。 泰緬鉄道。 ジャングルを切り裂き、死体の上に敷かれた線路。… 続きを読む
中央情報課 22 1月 2026 ウンコう日誌(第842号) 蒸気動車107号は、朝の大阪ユニオン駅を、ため息のような汽笛で出ていく。 貨車の陰に隠れるような小さな車体。煙突は短く、煤で黒く縁取られている。機関車のような威圧感はない。だが、ボイラーの中では、今日も最低限の蒸気が、最低限の覚悟で沸いている。 「今日は釜ヶ崎までやな」 運転台で、運転士の金城が独り… 続きを読む
中央情報課 20 1月 2026 ウンコう日誌(第841号) 大阪ユニオン駅の構内で、C53は黙っていた。 黒い流線形のボイラーは、かつて「燕」や「富士」を牽いた頃の面影を残しているが、今は青い簡易軌道の上に載せられ、貨車の列の先頭で息を潜めている。 この機関車は、害吉鉄道にとって「異物」だった。 害吉鉄道の主力は、無限列車だったり、蓄電池動車だったり、木炭動… 続きを読む
中央情報課 18 1月 2026 ウンコう日誌(第840号) それは木炭動車だった。 害吉鉄道の中でも、いちばん時代から取り残された車両だ。屋根の上には、もともと蓄電池箱が載るはずだった場所に、無理やり作った木炭ガス発生装置が鎮座している。鉄板は波打ち、ところどころ焦げ跡が残っている。緑色の車体には「107」の番号が白く残り、剥げた塗装の下から、さらに古い色が… 続きを読む
中央情報課 16 1月 2026 ウンコう日誌(第839号) それは、もともと無限列車だった機関車だ。 行き先表示も、時刻表も、終点という概念すら持たず、ただ積めるだけ人と荷を積み、線路が続く限り走るために造られた。 石炭を焚き、水を飲み、蒸気を吐きながら、昼も夜も区別なく走った。誰がどこから乗り、どこで降りたのか、そんなことは誰も気にしなかった。必要なのは「… 続きを読む
中央情報課 14 1月 2026 ウンコう日誌(第838号) それは害吉鉄道の蓄電池動車107号だった。 朝の大阪ユニオン駅を出て、ゆっくりと青いレールの上を転がり出す。架線はない。屋根の上にはパンタグラフの名残のような突起があるが、もう何年も上がることはない。夜のうちに倉庫の隅で充電され、昼はひたすら黙って走る。それがこいつの役目だった。 大阪ユニオン駅のホ… 続きを読む
中央情報課 12 1月 2026 ウンコう日誌(第837話) 社型C58は、今日も害吉鉄道の機関区の隅で、低い息をついている。 かつて本線用として生まれた設計の名残は、今も骨格にだけは残っているが、外板は煤と錆に覆われ、銘板の文字も半分ほど読めなくなった。 この機関車は、もう「特別扱い」される存在ではない。 ただの実用機だ。 朝になれば火を入れられ、コンクリ桟… 続きを読む
中央情報課 10 1月 2026 ウンコう日誌(第836話) 大阪ユニオン駅を発って、線路が急に細くなったあたりで、列車は一度、深く息を吸う。 それが蒸気動車107号だった。 ディーゼルでも電車でもない。 屋根に短い煙突を載せ、腹の奥で湯を沸かしながら、ちょこちょこと走る。 害吉鉄道でも、いちばん時代に取り残された車両だ。 停まったのは、名も怪しい小さなホーム… 続きを読む
中央情報課 8 1月 2026 ウンコう日誌(第835号) 害吉鉄道・大阪ユニオン駅構内。 朝とも夕ともつかぬ灰色の時間帯、青い線路の上に、煤をまとったC57が止まっていた。 ボイラーの側面には、かつて台湾で名乗っていた名残――CK285の記憶が、薄く、しかし確かに染みついている。 この機関車は、日本を出て、南へ渡り、また戻ってきた。 帝国の時代に輸出され、… 続きを読む
中央情報課 6 1月 2026 ウンコう日誌(第834号) 木炭動車は、不逞町駅でいったん息を整えていた。 屋根の上の木炭ガス発生炉は、もう新品の角などどこにも残っていない。鉄板は熱で歪み、継ぎ当てだらけで、ところどころ別の時代のボルトがねじ込まれている。炭を焚くたび、甘いような、焦げたような、どこか懐かしい匂いが漂った。 駅舎の前で、男が炭俵を下ろす。 「… 続きを読む
中央情報課 4 1月 2026 ウンコう日誌(第833号) そのC56は、帰ってきた、という言い方が一番近かった。 泰緬鉄道。地図の上では一本の細い線に過ぎない場所から、時間と死体と湿気だけを腹いっぱいに詰め込んで。 害吉鉄道・大阪ユニオン駅の片隅、貨物線の先で、C56はゆっくりと息を吐いた。吐いた息はもう蒸気ではなく、黒い埃だった。 「おお……また生きとっ… 続きを読む
中央情報課 2 1月 2026 ウンコう日誌(第832号) 大阪民国・害吉鉄道の朝は遅い。 それでも、この線区だけは必ず動く。 大阪ユニオン駅から芦原橋(本社前)を経て、釜ヶ崎へ向かう蓄電池動車。石炭も軽油も惜しい時代、電気だけが頼りの、時代に取り残された小さな車両だ。 まだ空が白みきらない時間、簡易ホームには人が集まっている。 背中に荷物を背負った者、寝袋… 続きを読む
中央情報課 1 1月 2026 賀正新年2026 害吉鉄道の元旦は、いつも音から始まる。 除夜の汽笛が終わると同時に、機関庫の奥で眠っていた C12 が、年が改まったことを確かめるように、短く、慎重に蒸気を吐いた。 この新年行事の正式名称は、賀正新年。 誰も「合唱」などとは言っていない。 ただ結果として、音が重なり、声が混じり、勝手に和声のようなも… 続きを読む