月: 2025年12月

ウンコう日誌(第823号) 中央情報課

ウンコう日誌(第823号)

天塩炭鉱鉄道で「社型C58」と呼ばれていたその機関車は、もともと炭鉱主の見栄と技術者の意地が生んだ存在だった。 国鉄がようやくC58を量産し始めた頃、天塩の炭鉱会社は「待っていられない」と判断し、国鉄設計をほぼそのまま写した図面で、自前の工場にC58を造らせた。石炭と鉄と人手は潤沢だった。国に頼らず…
ウンコう日誌(第822号) 中央情報課

ウンコう日誌(第822号)

夜明け前、コンクリ桟橋の空気は潮と油と、言葉にならない雑多な匂いが混じっていた。 107号はまだ眠っているように見えたが、屋根の蓄電箱の奥では、昨夜ため込んだ電気が静かに目を覚ましていた。石炭も軽油もいらない。音も煙も出さない。ここではそれが都合がよかった。 ホーム脇の詰所から、係員が顔を出す。 「…
ウンコう日誌(第821号) 中央情報課

ウンコう日誌(第821号)

──害吉鉄道・大阪ユニオン駅にて 台湾の山岳線を駆け抜けていた名機・CK285は、海を越えて大阪民国へ流れ着いた。 害吉鉄道の車庫係に言わせれば、 「또 하나 이상한の来よったで……どこから拾うて来たんや社長(サッチャン)……」 と頭を抱えるしかない厄物のひとつだった。 だが社長こと“鉄道帝”は、胸…
ウンコう日誌(第820号) 中央情報課

ウンコう日誌(第820号)

——大阪民国・混沌の街をコトコト走る“湯気の電車”—— 蒸気動車107号は、害吉鉄道の中でもひときわ異様な存在だった。 大阪ユニオン駅の片隅に、煤だらけの煙突をちょこんと生やし、 電車のようで電車でなく、汽車のようで汽車でもない。 戦前に北海道の片田舎で走っていたというが、 なぜか第四世界の大阪民国…
ウンコう日誌(第819号) 中央情報課

ウンコう日誌(第819号)

害吉鉄道・大阪ユニオン駅の片隅。蒸気機関車たちの溜まり場になっている古い検修庫に、黒光りした小ぶりの機関車が静かに眠っていた。 C56 160――通称「サルゴリラチンパンジー」。泰緬鉄道から帰ってきて何十年も経つのに、その異名だけはなぜか色濃く残っている。 帰国直後は国鉄の機関区を転々とし、そして老…
ウンコう日誌(第818号) 中央情報課

ウンコう日誌(第818号)

大阪民国の外れ――いや、外れというより “カオスの吹き溜まり” と呼ばれる芦原橋(本社前)。 そこに、時代から完全に取り残された一両が、今日ものそりとのそりと息をしていた。 緑の木炭動車・107号。 鼻先には煤で真っ黒になったガス発生炉。屋根上には、昔の農具か何かのような通風筒。 その姿は、害吉鉄道…
ウンコう(第817号) 中央情報課

ウンコう(第817号)

害吉鉄道・大阪ユニオン駅の薄明かりの下。 流線形に改造され、どこか戦前の亡霊のような姿をした C53形——**C5343「黒風号」**が、くぐもった低音を響かせて構内に現れた。 かつて大東亜の夢を担う高速旅客機関車として生まれたが、今は貨客混合の“裏仕事”専門。 鉄道帝が「これはワイの黒い翼や」と言…
ウンコう日誌(第816号) 中央情報課

ウンコう日誌(第816号)

コンクリ桟橋の朝は、海から吹く油じみた風と、どこの国の言語ともつかない怒号で始まる。そこにひょこ、と鼻先を出したのが——害吉鉄道の蓄電池動車《アシッド907》。 車体は濃い緑と薄い緑のツートン、鼻先には、いつ誰が付けたのか分からない巨大な排障器。元々は大阪民国の軍港で弾薬運搬をしていたが、戦後の混乱…